by 渡辺天和斎 Information
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2007年 03月 21日
帰省前後から読書熱がすごいことになってます。今月だけで20冊も本を買ってしまいました。
その中で一番熱心に読んでるのが「十二国記」シリーズです。左の絵はメイン主人公の陽子。 中華風異世界を舞台にした、超有名ファンタジー。NHK教育テレビでアニメにもなってるし、見たことある方もいるんでないかな? 一読してみて、「すげー物語に出会ってしまった」と思いました。 すげーと思った第一の点は、その世界観。その緻密さリアルさは圧巻。地理、歴史、文化、政治制度、生態系……読者に疑う隙も抱かせないほどしっかりと作られてます。さりげない文体での描写で、さもそれらが普通にそこにあるように思えました。 すげーと思った第二の点は、パンドラの箱をひっくり返したような心理描写。 現実世界では周りの人間の顔色をうかがう態度ゆえに、十二国世界では異世界からやってきたよそ者ゆえに、様々な形で悪意を向けられる陽子。それは命の危険すら伴うハードなものです。 彼女に悪意を向ける人々の心理も、悪意を向けられ続けて荒んでゆく陽子の心理も、胸くそ悪くなるほど生々しく描写しています。いやマジで。読むほどに、みぞおちの辺りをえぐられる不快感がボディーブローのように効いてきます。 だけどそれは自分にもある見たくない一面だったりするから、かえって目がそらせないんですよね。今でも、現実世界での陽子をとりまくうそ寒い人間関係を描いた「月の影 影の海」の上巻は怖くて読めません。身に覚えがありすぎて。 でも、パンドラの箱には最後に希望が残ったように、それらの苦難を乗り越えて、陽子がたくましく成長するところにカタルシスがあるんですよね。これは他の主人公のときも同じ。 「月の影 影の海」の終盤で、陽子は自分が十二国世界に呼ばれた理由を知り、重大な決断を迫られます。その重大な決断を自らに下し、十二国世界の住人として生きると決めてからの陽子の強さと潔さにしびれます。 基本的にどの話も、前半で主人公がいじめ抜かれ、後半〜終盤にかけて巻き返しという構成なので、上下巻のある話はセットで買うのがおすすめです。 陽子の等身大の苦悩もいいんだけど、王と王に仕える麒麟、高官たちの、高貴なる責務や苦悩にも惹かれます。主人公になる延王・延麒、泰麒、李斎将軍だけでなく、国を傾けてしまった王の追いつめられた心境とかも。 分かりやすい萌え要素とか一切ない硬派な小説だし、にもかかわらず魅力的な登場人物が数多い話なので、誰が一番好きか絞るのが難しいです。 あえて一人だけに絞るなら楽俊かな。底抜けのお人好しだけど、ただのお人好しじゃなくて、人間としての(半獣だけど)器の大きさや思慮深さを感じます。 楽俊一番の名台詞だと思うのは、「月の影 影の海」下巻、景王として玉座につくことをためらう陽子を励ますシーンのこれ。 「やるべきことを選んでおけば、やるべきことを放棄しなかった分だけ後悔がかるくてすむ」 王になってからの陽子もかっこよくて好きです。彼女の男前さは、彼女のこんな初勅(王が即位後初めて下す勅令)にも現れています。 「(略)人は誰の奴隷でもない。そんなことのために生まれるのじゃない。他者に虐げられても屈することのない心、災厄に襲われても挫けることのない心、不正があれば正すことを恐れず、豺虎(けだもの)に媚びず、−−わたしは慶の民にそんな不覊の民になってほしい。己という領土を治める唯一無二の君主に。そのためにまず、他者の前で毅然と首(こうべ)を上げることから始めてほしい。その証として、伏礼を廃す。−−これをもって初勅とする」 この言葉は、悪意に晒され命の危険と隣り合わせになりながらも、不屈の意志で生き延び、己の弱さを克服した陽子だからこそ説得力を持つんですよね。 世界観もキャラも魅力的な物語だけど、隙がなさすぎてSSは書けないな……とは思いました。それがちょっとだけ残念なところかな。
by tenhosai-north
| 2007-03-21 00:57
| 十二国記語り
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